
「「学力」の経済学」という本を紹介します。
この本の著者は教育経済学者の中室牧子さん。
教育経済学とは何かというと、この本によると「子育てにおいて、どのようなやり方が子供の学力に影響を及ぼすのか、データを用いて教育を経済学的に分析する学問」とのこと。
子供を持つ親として大変参考になる本でしたので、ポイントを紹介させていただきます。
この本の目的
この本の目的は、
「教育経済学があきらかにした「知っておかないともったいないこと」を紹介すること」
であると、前書きにはあります。
例えば
- 子供をご褒美で釣ってもよいのか?
- 「褒めて伸ばす」は有効なのか?
- ゲームのやり過ぎはよくないのか?
このような疑問に対して、実際に行われた実験から科学的に答えを導き出しています。
つまり、よくあるベテランの教育学者の主観ではなく、実験によって得られた科学的な根拠に基づく「本当の答え」が紹介されているわけです。
科学的な根拠とは?
例えば「子供をご褒美で釣ってもよいのか?」という問いに対しては、小2から中3までの約3万6,000人を対象にした調査が紹介されています。
この調査は、ハーバード大学の著名な教授がシカゴ、ダラス、ヒューストン、ニューヨーク、ワシントンDCの5都市で94億円の予算をかけて行った大規模なもの。
このように、実際にデータを取って、そのデータを分析した調査結果を科学的な根拠として、教育政策を作るわけですね。
この本では主に、アメリカの大学などで行われた実験や調査の結果が紹介されています。
やはりこの分野はアメリカは進んでいて、日本は遅れているとのこと。
アメリカでは2000年代初めあたりから、政府の方針として、教育政策には科学的な根拠が求められるようになったそうなんです。
つまり、州や学校が取り決める教育政策が科学的な根拠に基づいたものでないと、行政から予算が降りないわけです。
2001年にアメリカで成立した「落ちこぼれ防止法」では、「科学的な根拠に基づく」というフレーズが111回も出てくるんだそうですよ。徹底してます。
伝統的な考え方や主観的な意見に頼らず、確実に成功する教育方法を取るという方針なのでしょうかね。もしくは、伝統そのものが無いとか、ベテラン教師が不足していたのかもしれませんね。
日本の場合、まだまだベテラン教育者の経験と主観による教育がまかり通っていますよね。でもそれはそれで実績があるから間違ってはいないんだと思いますけど。
ただし「いい先生」に恵まれればよいのですが、知識も経験もない先生に当たってしまっては不安です。
まずは家庭での教育だけでも、科学的な根拠に基づいた方法を取りたいものです。
本をたくさん読む子は成績がよい?
私がこの本を読んでいて特に納得したのは、因果関係と相関関係とを区別し、確実な答えを導き出すことが重要、だとしているところです。
因果関係というのは、「原因」と「結果」の関係のことですね。「Aが原因でBになる」。
相関関係というのは、「AがあったところでBが起こった」ということ。AとBが同時にそこにあったので何か関係があるかもしれないけれど、必ずしも因果関係にあるわけではない。
例えば、
「本をたくさん読む子は成績がよい」
これはよく聞く話ですよね。でもこの本では、
A:「たくさん本を読む」という原因が、必ずしもB:「よい成績」という結果をもたらしているとは限らない。
としています。
なぜなら、成績がよい子の多くが読書が好きなだけで、読書さえすれば成績がよくなるとは限らない」からです。
そこには相関関係はあるけど、因果関係があると決まったわけではない。
教育経済学というのは、こうした問題に対して、実際に調査をした科学的な検証結果に基づいて結論を導き出す学問なのだそうです。
この本は全編に渡ってこの「科学的な根拠」をベースとした教育論が紹介されているので、説得力があります。
私も自分の子育てがいろいろ間違ってるなぁと思ってしまいました。
生きる力について
「認知能力」と「非認知能力(生きる力)」についても詳しく紹介されています。
学力テストによって計測される能力は一般的に「認知能力」と呼ばれます。
これとは別に、「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」などといった能力を「非認知能力」と呼びます。
一般的に「生きる力」と呼ばれている、人間力みたいな能力ですね。
この「非認知能力」を高めることが、将来の収入や学歴に大きく影響することがわかってきているんだそうです。
この件についても、この本にはアメリカで幼稚園児を対象に行われた調査結果が紹介されています。
これは幼稚園の頃に質の高い教育を受けさせた場合、受けさせない場合と比べてどうなるか、その幼稚園児達の約40年後までを追った凄い調査です。
そして「非認知能力」の中でも特に重要なのは次の2つ。
- 自制心
- やり抜く力
この2つが非常に重要なんですって。
こういった「非認知能力」の鍛え方についても、著者なりの方法が紹介されています。
今からでも遅くないと思うので、私も実践してみたいと思います。
終わりに
あまり内容を書いたらいけないので、ポイントを紹介してみました。
もどかしい内容になってしまい申し訳ありません。
でも大丈夫です。本の中には、このページで紹介している内容の何十倍もの情報が載ってます。
私もこの本を読んで、考え方がかなり変わりました。
でも一番重要なのは、この本に載っていることももちろん参考にしながら、自分の子供をよく見て、一番いい方法が何かを考えることですよね。
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