【今と昔】1メートルの定義のしかた

調べたりした

長さを測る基準「1m(メートル)」は、どうやって決められているかご存知ですか?

「1m」は約220年前に作られた基準なのですが、科学技術の進歩により、その計測方法も進化しています。

当初の測り方と、現代の測り方について紹介します。





昔の測り方

長さの基準を定義し、それを世界共通で使えるようにするためには、その根拠として世界共通のものが必要でした。

基準となる「世界共通のもの」とは?

この「世界共通のもの」は不変でなければなりません。

基準となるものの大きさが変化してしまっては、基準となる1mの長さも変化してしまいますからね。

いくつか案が出た中で採用された、世界共通のもの。

それは地球でした。

当時の人は世界共通で不変なものとして、地球を使って基準となる長さを定義することを考えました。

スケールがデカイですね。しかし相当他に無かったんでしょうね。

 

1mの決め方

「地球の子午線の、北極点から赤道までの長さの1,000万分の1」

これが、世界で一番初めに決められた「1m」でした。

 

子午線といいうのは、北極と南極とを結ぶ線。

昔の日本の時計は十二支で表されていて、12時のところが「子の刻(ねのこく)」、6時のところが「午の刻(うまのこく)」でした。

地球の一番上の北極点を「子」とし、一番下の南極点を「午」として、それらを結ぶ線だから「子午線」というわけです。

 

この子午線を北極から赤道まで歩いたり船に乗ったりして6年もかけて計測し、それを1,000万分の1にした長さ。

これを1mとしたわけです。

ちなみにこの方法で地球一周を測ると、ぴったり4万kmになります。

それもそのはず。1mの基準を、地球の大きさの1/4から定めたんだから当たり前ですね。

 

フランスで作られた

世界最初の1mは、1791年のフランス国民議会で正式に採用されました。

当時のフランスは測量技術が発達していたんですね。確かに「メートル」ってフランス語っぽい。

語源は「ものさし」や「測ること」を意味する古代ギリシャ語「メトロン」から。

 

なぜ世界共通を定義したのか

そもそも大昔は、世界共通の長さの基準なんて必要ありませんでした。

だって、別の国の人となんてめったに会わないですから。

それが、人類が船で世界を旅するようになった、いわゆる大航海時代。

世界中で様々なモノのやり取りが盛んになったため、長さの基準を定義する必要が出てきたと、そういうわけです。

 

メートル原器

メートルが誕生してから97年後の1888年。

1mの基準をより正確に定めるために「メートル原器」と呼ばれる金属の器具が誕生しました。

これは白金90%、イリジウム10%という非常に変形しづらい合金で作られたそうです。世界で一番変形しちゃいけないものですからね。

1888年に誕生した最初の30本のうち、No. 6の原器を「国際メートル原器」として、これに基づき「1メートル」が定義されました。

ちなみにこのメートル原器、摂氏0℃のときの長さが基準となっています。

金属は温度によって変形する可能性があるので、温度までルール化されていたわけです。

日本にはNo. 22のメートル原器が配布され、1890年(明治23年)に日本に到着しました。

このメートル原器は1960年まで使われていたんですよ。結構最近に思えますね。

 

今ではもう使われなくなったメートル原器ですが、世界中の博物館で大切に保管されているそうです。

日本のメートル原器は国の重要文化財として、茨城県つくば市にある「国立研究開発法人産業技術総合研究所」、略して産総研の、計量標準総合センターに保管されています。

漢字多いなぁ

 

現在の測り方

現在は「光の進む速さ」を基準にして測っています。

光を基準にする、とは?

光というのは、常に同じ速さです。

もし光が遅く見えるとき、それは時間が遅れているのだ

アインシュタインがそう言ったくらい、光速というのは不変なんですね。

この「光の速さ」を計測する技術が進歩したことで、今度は光を使って1mを定義し直すことになったわけです。

 

1mの決め方

「光が3億分の1秒間に進む距離」

これが、現在使われている「1m」の定義です。

光は1秒間に約30万km進みます。これはmにすると約3億m。

その3億分の1が、1mというわけです。

正確な定義は、

光が2億9979万2458分の1秒間に真空中を伝わる距離

です。

1983年に国際度量衡総会で決まりました。

これもけっこう最近ですね。

 

昔と今の距離の違いは?

1mの違い

現在の方法で計測した1mと、メートル原器の1mとでは、1億分の1mくらいの誤差があるそうです。

まぁ、メートル原器を基に長さが決められたので、ほとんど差が無くて当然なのですが、それだけ現在は誤差無く正確に測れるということですね。

 

地球の大きさの違い

昔の測り方は、そもそもが地球の大きさから1mを割り出しているから、地球一周はぴったり4万kmのはずでしたね。

しかし、地球の大きさを現在の技術で計測すると、地球一周は4,000万9,152m。

4万kmよりも9,152m長いことになります。

しかしその誤差は2/10,000(0.02%)。

今から200年以上前に人力で測量したことを考えると、驚くべき精度なんだそうです。

昔の人ってスゴイですね。何がスゴイって、気合いとか執念とかがスゴイですね。

 

最後に

ほんの50年前まで、世界共通の1mはメートル原器でした。

それが光の速さを基準に定められたのが約30年前。

技術が進歩したことで、かなり正確に1mを定義することができるようになりました。

あまりにも正確すぎるので、別にメートル原器のままでもよかったんじゃない?

と思ったのですが、そうはいかないんですね。

なぜなら今、科学や医療、工業製品などの様々な分野において、マイクロメートルやナノメートルといった、極小の世界でも、素材や細胞などを自由にコントロールすることが可能となっているからです。

そういった極小の世界で正確な研究や製品開発ができるのは、正確に1mを計測しているおかげなんですね。





 





引用:日本部品供給装置工業会

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