うるう年を2月で調整するのは、大昔は1年が3月から始まっていたから

調べたりした

4年に1度のうるう年は、2月29日がありますね。

これは、地球が太陽の周りを回る時間が、だいたい365日6時間なので、余った6時間を4年に1度、まとめて1日にして、2月の最終日にあてているのです。

ではなぜ、1年の最後に1日を足して12月32日にせず、2月29日なのか?

その理由をご紹介します。




 

かいつまんで説明すると

ざっくり言えば、

古代ローマで使われていたカレンダーが今の3月から始まっていて、1年の最後が今の2月だったので、うるう年は2月で調整されることになりました。

現在、世界のスタンダードとなっているカレンダーは「グレゴリオ暦」といいます。
1年は1月から始まる365日で、4年に1度うるう年がある。というやつ。その正確版。

「グレゴリオ暦」は1582年10月15日から使われており、日本では明治6年(1873年)から使われています。まだ150年しか経ってないんですね。

「グレゴリオ暦」は古代ローマの暦が元になっていて、少しずつ修正しながらやっと現在の正確な暦になっています。

この「グレゴリオ暦」の前に「ユリウス暦」があり、その前には「ヌマ暦」、その前には「ロムルス暦」がありました。

話はこの「ロムルス暦」から始まります。

 

最初は古代ローマのロムルス暦

紀元前8世紀、ローマを建国し、ローマという地名の語源になったとされる皇帝ロムルという人がいました。

このロムルスさんが、国の暦として最初に採用したのが「ロムルス暦」です。

昔の皇帝は自らの権威や神性を示すために、人智を超えた太陽や月の動き表す「暦」に、自分の名前をつけたんですね。

「ロムルス暦 」は、現在でいうところの3月~12月までの10か月しか月日が割り当てられていませんでした

1年は「Martius」から始まる10ヶ月間で、農業もしない冬の時期は、月日を割り振る必要が無いため「冬」とされていました。

1年が終わったら

ロムルス暦では、それぞれの月は次のように呼ばれていました。ラテン語です。

現在 ロムルス暦 由来(諸説あるものもあります)
3月 Martius ローマ神話の戦と農耕の神「マールス」から
4月 Aprilis ラテン語の「aperire(開く)」という言葉から
また、ギリシャ神話の女神Aphroditeからという説も
5月 Maius ローマ神話の豊穣の女神Maiaから
6月 Iunius ローマ神話の結婚と出産の女神Junoから
また、若者という意味のiunioresからという説も
7月 Quintilis 5番目の月という意味
8月 Sextilis 6番目の月という意味
9月 September 7番目の月という意味
10月 October 8番目の月という意味
11月 November 9番目の月という意味
12月 December 10番目の月という意味
1月
2月

9月以降は、現在でも2つずれたまま使われています!不思議!

 

ヌマ暦でいろいろ変えた

同じく紀元前8世紀、今度は古代ローマ皇帝ヌマ・ポンピリウという人が改暦を行い、これが「ヌマ暦」と呼ばれるようになりました。

冬の時期にも名前が付いた

皇帝ヌマは、それまで「冬」とされていた1年の終わりの期間「Ianuarius(ヤヌアリウス)」「Februarius(フェブルアリウス)」という名前を付けました。
もちろんこれもラテン語です。

現在 ヌマ暦 由来(諸説あるものもあります)
3月 Martius ローマ神話の戦と農耕の神「マールス」から
4月 Aprilis ラテン語の「aperire(開く)」という言葉から
また、ギリシャ神話の女神Aphroditeからという説も
5月 Maius ローマ神話の豊穣の女神Maiaから
6月 Iunius ローマ神話の結婚と出産の女神Junoから
また、若者という意味のiunioresからという説も
7月 Quintilis 5番目の月という意味
8月 Sextilis 6番目の月という意味
9月 September 7番目の月という意味
10月 October 8番目の月という意味
11月 November 9番目の月という意味
12月 December 10番目の月という意味
1月 Ianuarius ローマ神話の「門の守護神」 別名はヤヌス
2月 Februarius サビニ戦争の戦死者慰霊祭フェブルアーリアより「祓い」「清め」を意味するという説も

今でいう「January」と「February」の元ですね。

なぜそれまで「冬」とされていた時期にも名前を付けたかといえば、この時期に名前を付けることで神々に祈りを捧げ、ローマの平和を願った、というのが定説のようです。

 

「うるう月」で日付のズレを調整していた

ヌマ暦は1年の日数が355日しかありませんでした。10日足りません。

当然、季節と日付がズレていってしまうため、およそ2年に1度、27日間の「うるう月」当時は年末だった「Februarius」の後ろに挿入していました。

この頃はまだ、1年の始まりが「Martius(Match)」で、終わりが「Februarius(February)」だったんですね。

日付のズレを2月で調整する慣習はここから始まりました。

現在 ヌマ暦 由来(諸説あるものもあります)
3月 Martius ローマ神話の戦と農耕の神「マールス」から
4月 Aprilis ラテン語の「aperire(開く)」という言葉から
また、ギリシャ神話の女神Aphroditeからという説も
5月 Maius ローマ神話の豊穣の女神Maiaから
6月 Iunius ローマ神話の結婚と出産の女神Junoから
また、若者という意味のiunioresからという説も
7月 Quintilis 5番目の月という意味
8月 Sextilis 6番目の月という意味
9月 September 7番目の月という意味
10月 October 8番目の月という意味
11月 November 9番目の月という意味
12月 December 10番目の月という意味
1月 Ianuarius ローマ神話の「門の守護神」 別名はヤヌス
2月 Februarius サビニ戦争の戦死者慰霊祭フェブルアーリアより「祓い」「清め」を意味するという説も
無い うるう月 2年に1度、27日間足される調整月

1年の始まりがIanuariusになった

ヌマ暦で「Ianuarius」と「Februarius」が追加されたとき、まだこの2カ月は年末でしたが、今では年の初めになっています。

紀元前153年に行われた改暦によって、「Ianuarius」と「Februarius」が1年の最初の月になりました。

これは、ローマの執政官の任期を早めることが目的だという説が有力です。

執政官の選挙が1月に行われていたために1月に就任することが多かったので、1年の始まりもこのタイミングにした、と言われています。

天文学的な理由ではないことが残念ですが、冬至の後の新月がだいたい元日あたりになるので、年の初めとしてはふさわしいのかもしれません。

冬至は昼間の長さが1年で1番短いため、太陽の力が最も弱まる時期とする信仰が世界各地にあります。

そして新月は、これから月が現れ始める最初のタイミングです。

冬至と新月が重なる時期を1年の初めとしたのは、天文学的な理由も少なからずあったのだと思います。証拠はありませんが。

現在 ヌマ暦 由来(諸説あるものもあります)
1月 Ianuarius ローマ神話の「門の守護神」 別名はヤヌス
2月 Februarius サビニ戦争の戦死者慰霊祭フェブルアーリアより「祓い」「清め」を意味するという説も
無い うるう月 2年に1度、27日間足される調整月
3月 Martius ローマ神話の戦と農耕の神「マールス」から
4月 Aprilis ラテン語の「aperire(開く)」という言葉から
また、ギリシャ神話の女神Aphroditeからという説も
5月 Maius ローマ神話の豊穣の女神Maiaから
6月 Iunius ローマ神話の結婚と出産の女神Junoから
また、若者という意味のiunioresからという説も
7月 Quintilis 5番目の月という意味
8月 Sextilis 6番目の月という意味
9月 September 7番目の月という意味
10月 October 8番目の月という意味
11月 November 9番目の月という意味
12月 December 10番目の月という意味

やっとJanuaryとFebruaryが年初になり、現代のカレンダーに近づきました!

 

ユリウス暦で1年が365日になった

1年の日数が355日しか無いヌマ暦を、これじゃいかん!ということで、あの有名なユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が、紀元前45年に改めました。

それが「ユリウス暦」です。

ユリウス暦は1年を365日とし、4年に1度のうるう年を366日としました。
また、ヌマ暦では日数が29日だった1ヵ月の日数を、30日か31日に変更しました。

しかし、「Februarius」だけは日数を増やされず、ヌマ暦と同じ28日のままとなりました。これは、Februariusは宗教的な祭礼が多くあったため、混乱を避けるために日数の変更を避けたためと考えられています。

こうして現在使われている暦がほぼできあがったわけです。

ユリウスは改暦の際、それまでQuintilis(5番目の月)とされていた現在の7月を、自分の名前「Julius」に改名しました。ユリウスの誕生月だったんだそうです。

また西暦8年には、ユリウスの養子だった皇帝アウグストゥスが、自分の誕生月である現在の8月に自分の名前「Augustus」を付けました。

現在 ユリウス暦 由来(諸説あるものもあります)
1月 Ianuarius ローマ神話の「門の守護神」 別名はヤヌス
2月 Februarius サビニ戦争の戦死者慰霊祭フェブルアーリアより「祓い」「清め」を意味するという説も
3月 Martius ローマ神話の戦と農耕の神「マールス」から
4月 Aprilis ラテン語の「aperire(開く)」という言葉から
また、ギリシャ神話の女神Aphroditeからという説も
5月 Maius ローマ神話の豊穣の女神Maiaから
6月 Iunius ローマ神話の結婚と出産の女神Junoから
また、若者という意味のiunioresからという説も
7月 Julius ユリウスが自分の誕生月に自分の名前を付けた
8月 Augustus アウグストゥスが自分の誕生月に自分の名前を付けた
9月 September 7番目の月という意味
10月 October 8番目の月という意味
11月 November 9番目の月という意味
12月 December 10番目の月という意味

 

そしてグレゴリオ暦へ

ユリウス・カエサルがユリウス暦を採用してから1627年後の1582年、ローマ教皇グレゴリウス13世が改暦を行いました。

これが現在世界中で使われている「グレゴリオ暦」です。ユリウス暦とグレゴリオ暦の違いは次の通り。

ちなみに実際の地球の公転周期は365.242199日、時間にすると365日5時間48分45秒なのだそうです。

  • ユリウス暦
    1年を365.25日とする
    時間にすると365日6時間0分0秒
    うるう年は4年に1度、2月に1日を追加
  • グレゴリオ暦
    1年を365.2425日とする
    時間にすると365日5時間48分0秒
    うるう年は、4で割り切れる年。ただし100で割り切れる年はうるう年にしない。でも400で割り切れる年はうるう年にする。

最近では西暦2000年が、100で割り切れるけど、400でも割り切れるのでうるう年とする。というのが話題になりました(最近?)

 

「カレンダー」の語源

ちなみに、暦のことをカレンダーと言いますが、この語源も古代ローマにあります。

英語の「calendar」は、ラテン語の「calendarium」に由来します。これはラテン語で「帳簿」を意味します。

古代ローマでは月の最初の日を「calendae」と呼び、税金や家賃などの支払い日にしていたそうです。

この帳簿の名前「calendarium」が、後に日付や曜日を表すようになったのだそうです。

 

最後に

大昔は今の3月が1年の始まりだったから、9月から12月は「7番目の月」「8番目の月」「9番目の月」「10番目の月」と、いまだに2つズレて使っているというのが、個人的には衝撃でした。

また、英語の月の名前の意味なんて考えたこともなかったので、詳しく調べ始めたら驚きの連続でとても楽しかったです。

この記事を書くきっかけとなった。Podcastチャンネル「そんない理科の時間」さんに深く感謝します。

2015年1月15日配信「第97回 1年の始まりはどう決まる?」

 

Special Thanks:国立天文台そんない理科の時間

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