いよいよプレシーズンテストも終わり、2026年のF1が始まります。
今年のF1を存分に楽しむためにも、車体の変更点やパワーユニットの仕組みについておさらいしておきたいと思います。
2026年の4つの大きな変更点
2026年のF1は技術レギュレーションが大きく見直され、マシンの性質そのものが変わります。主な変更点は次の4つです。
- 車体の大幅変更(小型化・軽量化)
- パワーユニットの新規定(電動化率の向上)
- アクティブエアロの導入
- 2つのブーストモードの採用
これらが組み合わさることで、2026年のF1マシンはこれまでとは異なる走り方を求められるようになります。
車体の大幅変更(小型化・軽量化)
接近戦やオーバーテイクがしやすい環境を目指し、車体とタイヤのサイズが縮小されます。
車体サイズの縮小
少し縮小されます。ドライバーにとってこれがどれほど影響するのかは未知数ですが、レースはしやすくなりそうです。
| 項目 | 2022 ~2025年 |
2026年 | 変化量 |
|---|---|---|---|
| 全長 | 5220 mm | 5000 mm | 22 cm短い |
| 車幅 | 2000 mm | 1900 mm | 10 cm狭い |
| ホイールベース | 3600 mm | 3400 mm | 20cm短い |
| 車両重量 | 798 kg | 768 kg | −30 kg |
ホイールベースが20cm短くなることで、マシンがより曲がりやすくなり、重量が30kg軽量化することで、より俊敏なマシンになるそうです。
タイヤ幅の縮小
タイヤの幅が縮小すると空気抵抗が減るので、ストレートスピードの向上とマシン全体の軽量化につながります。
| タイヤ | 2022 ~2025年 |
2026年 | 変化量 |
|---|---|---|---|
| フロント | 305 mm | 280 mm | 約2.5 cm細い |
| リア | 405 mm | 375 mm | 約3cm細い |
パワーユニットの新規定(電動化率の向上)
すっごい変わります。理解を深めるために、基礎知識をおさらいしてから説明します。
基礎知識おさらい
- 燃料を燃やす普通のエンジンのことを「ICE」と呼びます。Internal Combustion Engineの略です。訳すと「内燃機関」。そのままです。
- F1のエンジンは「ICE+電気モーター+バッテリー」で構成されています。
- そのため、F1のエンジンはPU(Power Unit)と呼びます。読み方は「ピーユー」です。「プ」と読むと笑われます。
- 電気モーターは従来「MGU-K」と「MGU-H」の2種類がありました。
PU変更点まとめ
もっとも大きな変化はICEとモーターとの比率変更、MGU-Hの廃止です。
発電機能が減ったのに電動出力が増えました。
| 項目 | 2022 〜2025年 |
2026年 | 変化量 |
|---|---|---|---|
| 電動比率 ICE:モーター |
80%:20% | 50%:50% | 電動比率が大幅増 |
| ICE出力 | 〜560 kW (約750馬力) |
400 kW (約536馬力) |
約−160 kW (約-214馬力) |
| MGU-K | 120 kW (約161馬力) |
350 kW (約469馬力) |
+230 kW (約+308馬力) |
| MGU-H | 搭載 | 廃止 | |
| 燃料 | 植物由来燃料10% +化石燃料90% |
持続可能燃料 100% (合成燃料) |
完全カーボン ニュートラル化 |
車の出力は通常「馬力」で表すものですが、F1は「kW(キロワット)」で表します。
これは出力の表現をICEとモーターとで合わせるためです。
1馬力(hp)=約0.746kWと計算されています。
ICEと電気の比率が「50:50」とは?
ICEの出力は560kw → 400kWに下がり、
MGU‑Kの出力は 120kW → 350kWに大幅強化されます。
400kW : 350kW となるため、
ICEと電気モーターの比率がほぼ50:50になったと言われるワケです。
実際には54:46ですね。
MGU-K、MGU-Hとは?
MGU-Hは廃止となりましたが、廃止となったことがどう影響しているかを知るためにも、仕組みを説明します。
この2つは電気モーターの名前です。
どちらも発電する機能を持ちますが、発電方法と出力先がそれぞれ異なります。
MGU-K(Motor Generator Unit – Kinetic)
- 発電の役割
減速するときに失われる運動エネルギーを電気に変えて、バッテリーに蓄えます。
マシンが減速する方法は2つあります。どちらの減速でもMGU-Kは発電します。
・ブレーキを踏む減速
・アクセルを離した時のエンジンブレーキ - モーターの役割
マシンの加速時、マシンを前に押し出します。
電動アシスト自転車の「ウィーーン!」の、とんでもなく強力なF1版です。
MGU-H(Motor Generator Unit – Heat)
※2026年は廃止
- 発電の役割
排気ガスで高速回転しているターボの“軸”につながっていて、その回転を利用して発電します。
エンジンが回っている限りターボも回るので、直線のように高回転が続く区間では大量に発電できるのが特徴です。 - モーターの役割
ターボの回転を補う役割があります。
電力でターボの軸を回し、ターボの立ち上がりを助けます。
特にスタート直後や低速コーナーの立ち上がりなど、排気ガスが弱くてターボが十分に回らない場面で効果を発揮し、加速のもたつきを抑える役割を持っています。
加速の鈍化と減速時のみの発電へ
MGU-Hの廃止により、ターボを電気で瞬時に補助することができなくなりました。
→加速が鈍化します
走行中に排気エネルギーから発電する仕組みが無くなり、発電は減速時だけとなります。
→減速が多くなります
- スタート直後や低速コーナー立ち上がりの加速が、これまでより穏やかになる
- ブレーキングの取り方が発電量を左右する
- 「走りながら発電する戦い」から「減速でエネルギーを作る戦い」へと変わる
電力を「どこで使い、どこで貯めるか」が勝負のカギとなります。
2026年のF1は、走行技術に加えてエネルギー管理能力が重要になる時代へと変わります。
アクティブエアロの導入
2025年まではリアウィングが開閉する「DRS」が使われていましたが、2026年からはフロントウイングも開きます。
フロント、リアの2つを同時に動かす仕組みのことを「アクティブエアロ」と呼びます。
DRSはオーバーテイクのためにありましたが、アクティブエアロはエネルギー消費を抑えることが目的の仕組みです。
アクティブエアロの効果
主に次の2つの状態を切り替えます。
- ウイングを寝かせる低ドラッグモード(直線)
空気抵抗(ドラッグ)を減らし、最高速を伸ばす。 - ウイングを立てる高ダウンフォースモード(コーナー)
ダウンフォースを増やし、コーナリング性能を高める。
これにより、直線ではスピードを稼ぎつつ、コーナーではしっかりとグリップを確保することができます。
マシンの特性を「直線寄り」「コーナー寄り」のどちらかに固定するのではなく、
走行中に切り替えられるのがアクティブエアロの大きな特徴です。
どこでも使える
DRSはサーキット内のDRS区間でしか使用できませんでした。
アクティブエアロはレース中にどこでも使用することができます。
アクティブエアロのオン・オフはドライバーが行います。
レース中は常にオン・オフを切り替える必要が出てきます。
めんどくさいですね。
2つのブーストモードの採用
2026年のF1では、電動パワーの比率が大きくなり、「電気をどう使うか」がレースの重要な要素になります。
その中心となるのが、ドライバーが使い分ける2つのモード、
「ブーストモード」と「オーバーテイクモード」です。
どちらも電気モーターの出力を一時的に高めるためのモードですが、
役割と使える条件が異なります。
ブーストモード
ブーストモードは、レース中に基本的に使用する電動出力のことです。
サーキットのどこでも使用することができます。
ICEを電力でブーストするので「ブーストモード」です。
「電動アシストモード」だとママチャリみたいなので「ブーストモード」の方がかっこいいですね。
今までもブーストモードの仕組みはありましたが、今回は電動出力が120kW→350kWと増大したので、こういう呼び方をしているみたいです。
オーバーテイクモード
今回新たに導入されたオーバーテイクモードは、追い抜き専用の強力な電動加速モードです。
ただし、いつでも使えるわけではなく、使用には条件があります。
DRSと同じです。
- 決められた検知区間でのみ使用可能
- 前を走るマシンとのタイム差が1秒以内
DRSの「空力による追い抜き補助」に対し、オーバーテイクモードは「電動パワーによる追い抜き補助」と言えます。
2つのモードの電力制限
この2つのモードは、使用できる場所やタイミングの他にも、電力制限の内容が異なります。
ブーストモードの電力制限
ブーストモードの使用には以下の電力制限があります。
- 時速290kmまでは、最大350kWで電力支援可能
- 時速290〜345kmでは出力が段階的に減少
- 時速345kmで電気出力はゼロになる
つまり時速345km以上では電動アシストは使用できません。
オーバーテイクモードの電力制限
オーバーテイクモードも電力による出力は同じですが、上限速度が引き上げられます。
その違いで、オーバーテイクをしやすくしています。
- 時速337km/hまでは、最大350kWで電力支援可能
- 時速337〜355kmでは出力が段階的に減少
- 時速355kmで電気出力はゼロになる
最大出力は2つとも同じですが、「フルパワーを維持できる速度域」を変えているというわけです。
まとめ:レースはどうなる?
レース中、ドライバーはハンドル操作とアクセル、ブレーキ操作を、以下のことを考慮しながらドライブすることになります。
- どの区間で電力を使うか?温存するか?
- どのブレーキングでどれだけ発電するか?
- オーバーテイクモードを使うタイミング
- 時速290kmを超える区間で電力をどう最大化するか
- ストレート前の最終コーナーで十分な電力を確保できているか
- バッテリー残量を常に把握しながらのペース管理
- アクティブエアロを開閉する最適なタイミング
- 防御時に電力を使うか、攻撃のために温存するかの判断
- レース終盤に向けたエネルギー配分戦略
- タイヤマネジメント!
あんなに激しいレースを、こんなことも考えながらドライブしなければなりません。
しかもバトルしたりピットと会話をしたりもします。
大丈夫でしょうか?
2026年のF1は、走り方そのものが大きく変わるシーズンになると言われます。
DRSでさえ「マリオカートみたいと」言われていたところに、電力マネジメントやウイングの開閉まで追加されました。
ドライビングテクニックだけが問われる純粋なレースから、新しい任天堂のゲームみたいに見えなくもありません。
今のところ「こんなのレースじゃない」という声も聞こえますが、はたしてどんなレース展開になるのか。来週の開幕が楽しみです。



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