図解:アンダーカット 早めにタイヤ交換し、新品タイヤで追い上げる作戦

F1の世界

F1のレースではルール上、1回のレース中に必ず2種類以上のタイヤを使うことが義務付けられています。

つまり各ドライバーは、レース中に必ず一度はタイヤ交換をしなければなりません。

そしてタイヤというのは、何周も走ったタイヤよりも新品のタイヤの方が速く走ることができます。このタイヤの特性を利用した戦略が「アンダーカット」です。




アンダーカットの仕組み

アンダーカットとは簡単に言えば、

ライバルよりも先にタイヤ交換をして、タイムの速い新品タイヤで追い上げ、次にライバルがタイヤ交換に入った時に追い抜く

という作戦です。文章だけではイメージしづらいですよね。

いまレース中に、1周を1分30秒で走る、同じペースで走っている2台がいるとします。その差がたった1秒だとしても、同じペースで走っているので、なかなか差は縮まらないし、広がりもしません。

ここで、フェラーリが先にピットへ入り、新しいタイヤに交換したとします。

タイヤ交換にかかる時間は通常「ピットに入る→タイヤ交換する→ピットから出る」で、20秒~25秒程度です。こでは20秒かかったこととします。

通常、タイヤ交換の作業自体は2~3秒で終わります。コースから外れてピットの前まで行き、タイヤ交換をしてから再びコースに出るまでの時間が、合計で20~25秒程度かかります。この時間はサーキット毎に異なります。

タイヤを交換してコースに復帰したフェラーリのペースが、1周1分28秒に上がりました!

しかし、フェラーリはタイヤ交換に20秒かかっているので、元の差である1秒と併せると、2台の差は21秒に広がりました。

差は広がりましたが、タイヤを交換してペースの上がったフェラーリは、レッドブルよりも2秒速いペースでどんどん差を縮めることができます。

この状態で3周走ると、フェラーリとレッドブルの差は6秒(2秒×3周)縮まりますね。

すると、タイヤ交換の直後には21秒あった差は、3周後には15秒差(21-6)まで縮まります
新しいタイヤのおかげです。

ここでレッドブルがやようやくピットイン。
フェラーリと同じく、20秒かけてタイヤ交換を行ったとします。

フェラーリよりも15秒前を走っていたレッドブルが、20秒かけてタイヤ交換するということは、コースに復帰した時にはフェラーリの5秒後方になりますね(15-20)。

フェラーリの方が3周分だけ古いタイヤを使っていることになりますが、ほぼ新品のタイヤを使っている2台のペースは同じ1分28秒ペース。これでフェラーリはアンダーカット成功です。

これが「アンダーカット」の仕組みです。おわかりいただけましたでしょうか?

もちろん、いつもこんなに上手くいくわけではありません。アンダーカットを防ぐために同時にピットインする場合もありますし、タイヤ交換が2回必要となるコースの場合は、古いタイヤで長く引っ張った方が有利になる場合もあります。

そういった駆け引きを楽しむためにも、このアンダーカットの仕組みを覚えていただければと思います。

ここでは、争う2台が同じペースで走っていることを前提としてご説明しました。しかし常にペースが同じというわけではありません。ペースの異なる車同士で、いかにライバルを出し抜くか?といったところも、レースの見所の一つです。

 

オーバーカット

アンダーカットの逆で、オーバーカットという戦略があります。

これは、レース前半にライバルとの差を広げるだけ広げておいて、タイヤ交換をライバルよりも後に行う作戦です。差が広がってからタイヤ交換をするので、ライバルにアンダーカットされずに済みます。さらに、レースの後半はより新しいタイヤでレースを進めることができるので余計有利です。絶対勝つような人がやります。

F1ではオーバーカットを見ることはほとんどありません。なぜなら、オーバーカットには主に、次の条件が必要だからです。

  • 気温が低く、タイヤに熱が入るのに時間がかかる(タイヤ交換後の数周はタイムが落ちる)
  • 他の車よりも速いペースで走ることができ、その差が大きい。

マシンの性能が非常に近い中で戦っているF1では、オーバーカットの場面を見ることはほとんどありません。

なので、知らなくても大丈夫です。なので、詳しい説明は割愛させていただきます。

ただし、オーバーカットをしかけるチームがいるとすれば、それはいつもと違う特殊なレースの場合です。たまに違うパターンがあると、それはそれで楽しいレースになったりします。F1を観戦する機会があれば、ぜひこのあたりのレース展開に注目していただきたいです。

最後に

アンダーカットは、F1を観る上では欠かせない知識です。実際、必ずと言っていいほど毎回レースのカギとなります。

難しいことは無いと思いますので、ぜひ仕組みを理解していただき、観戦を楽しんでいただきたいです。

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